監修:東海大学医学部腎内分泌代謝内科 教授 深川雅史 先生

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監修:東海大学医学部腎内分泌代謝内科 教授 深川雅史 先生

腎臓の大切なはたらきとは?

腎臓の主なはたらきは5つあり、人の体を常に健康に保つための重要な役割を担っています。

血液中の老廃物をろ過し、尿として排出

私たちの体内では、血液が全身を循環して、臓器や細胞に不可欠な酸素や栄養を運んでいます。そのため、全身を巡った後の血液には、新陳代謝によって生じた老廃物が混ざっています。この老廃物だけを取り除くため、腎臓は流れ込んできた血液をろ過し、体に必要なものは再吸収し、不要なものは尿として体外へ排泄します。腎臓はこれらをより分けるためのフィルターの役割を果たしています。

血液中の老廃物をろ過し、尿として排出

老廃物の排泄ができなくなると…

腎臓の機能が低下すると充分に老廃物が排泄されなくなります。体にたまった老廃物は有毒物質となり、体の不調やさまざまな病気の原因に。もし、尿が排泄できなくなると体内に毒素が充満し、放置しておくと数日から数ヵ月のうちに命を落とすといわれています。

水分量と電解質のバランスを維持する

私たちの体は、食事や飲水、運動などによって水分量が変わります。そのため腎臓は、尿の濃さ(成分)や量を調整して体内の水分量を調整したり、血液中の電解質を適切な濃度に維持したりしています。

※ ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなど。

水分量と電解質のバランスを維持する

水・電解質のバランスが維持できなくなると…

顔や手足のむくみは腎臓からの危険信号。体内の調整が上手くいかず、余分な水分や塩分が体内に残ってしまうことが原因です。逆に、体内の水分が少なくなると脱水症状を引き起こします。また、pHバランスが崩れて体が酸性に傾くと、体内のさまざまな酵素が上手くはたらかなくなってしまいます。

生命に関わるホルモンをつくり出し、

血圧を調節する

腎臓は血圧を調節するホルモンをつくるはたらきがあり、体内の水分量や血管の収縮を調節することで血圧を一定に保つ役割があります。

骨を強くする

骨を強くするには、骨にカルシウムが定着しなくてはなりません。
これには「活性型ビタミンD」というホルモンが必要で、腎臓はこのホルモンをつくるはたらきがあります。

生命に関わるホルモンをつくり出し、

血圧の調節ができなくなると…

腎臓の機能が低下すると血圧の調節が上手くはたらかず、高血圧を引き起こすことがあります。それが引き金となり、心臓発作や脳卒中の危険を招くことも。逆に、高血圧自体が腎臓に負担をかけ、腎臓の機能を低下させるケースもよくみられます。

強い骨がつくれなくなると…

腎臓の機能が低下するとビタミンDの活性化も低下してしまうため、どんどん骨が弱くなっていきます。これらが加齢による骨量の低下とあいまって、骨粗しょう症の進行を加速させることが少なくありません。

血液をつくる

血液中の赤血球が不足して貧血になると、腎臓から造血ホルモンが分泌され、骨髄に赤血球をつくるようにはたらきかけます。

赤血球が充分に生産されなくなると…

腎臓の機能の低下が続くとエリスロポエチンの産生が低下し、赤血球が減少して貧血を引き起こします。これにより、めまい、動悸、倦怠感といった症状が起こります。このような腎臓の機能の低下に起因する貧血は「腎性貧血」と呼ばれています。