監修:東海大学医学部腎内分泌代謝内科 教授 深川雅史 先生

文字サイズ
監修:東海大学医学部腎内分泌代謝内科 教授 深川雅史 先生

CKDと互いに影響を与え合う病気
高血圧

高血圧は腎臓の血管を傷め、ろ過機能を低下させます。この状態で体内の塩分を排出しようとすると血圧が上昇し、さらに腎臓に負荷をかけるという悪循環が起こります。また、他の臓器の合併症も引き起こします。そのため、血圧を管理する治療や規則正しい生活を身に付けることが必要です。

CKD患者さんにおける血圧の管理の目安

  血圧
75歳未満
血圧
75歳以上
糖尿病(-) たんぱく尿(-) 140/90mmHg未満 150/90mmHg未満
たんぱく尿(+) 130/80mmHg未満 150/90mmHg未満
糖尿病(+)   130/80mmHg未満 150/90mmHg未満
  • 75歳未満では、CKDステージを問わず、糖尿病およびたんぱく尿の有無により降圧基準を定めました。
  • たんぱく尿については、軽度尿たんぱく(0.15g/gCr)以上を「たんぱく尿あり」と判定します。
  • 75歳以上では、起立性低血圧や急性腎障害などの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指します。
  • 出典:「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」p22-24(日本腎臓学会編)

血圧が高めの人は定期的な血圧測定を!

CKDの悪化を防ぐためには、血圧の管理が不可欠になります。自分の血圧を常に把握するために、習慣的に家庭での血圧を測定することをおすすめします。診察室での血圧が良好であっても、夜間や早朝など1日を通じた血圧の管理が重要です。朝晩2回の家庭血圧を測定して記録し、来院時に持参するようにしましょう。 高血圧はCKDの危険因子の1つというだけでなく、心筋梗塞や脳卒中の原因ともなります。血圧が高めの人は塩分を控え、バランスの良い食生活と適度な運動、禁煙などの生活習慣の改善に今すぐ取り組むようにしましょう。

生活習慣の改善項目

1. 減塩 3g/日以上6g/日未満
2. 食塩以外の栄養素 野菜、果物の積極的摂取
コレステロールや飽和脂肪酸(ラードやバターなど)の摂取を控える
魚(魚油)の積極的摂取
3. 減塩 BMI[体重(kg) ÷ 身長(m)2]が25未満
4. 運動 心血管疾患のない高血圧者が対象で、中等度の強度の有酸素運動(ウォーキング・水中運動など)を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う
5. 節酒 エタノールで男性20〜30ml/日以下
女性10〜20mL/日以下
6. 禁煙 (受動喫煙の防止も含む)

生活習慣の複合的な改善はより効果的です。

  • 重篤な腎障害を伴う患者さんは高カリウム(K)血症をきたす危険性があるため、野菜・果実の積極的摂取は推奨しません。また、糖分の多い果実の過剰な摂取は、特に肥満者や糖尿病などのエネルギー制限が必要な患者さんではすすめられません。(日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン制作委員会編:生活習慣の修正.高血圧治療ガイドライン2014, p39-44より引用・改変)

目安の値を目指すために薬を服用しましょう。

生活習慣の改善と並行して、降圧薬を用い血圧を管理します。CKDの患者さんには、たんぱく尿減少効果が期待できるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)もしくは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬がよく使用されます。また病状に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬を使用する場合があります。処方された薬をきちんと飲み、管理目標値内にコントロールすることが重要です。